これは、ブリキのおもちゃで有名な北原さんのために、作ったオーディオです。
Decca Brothers
スピーカーのDecca Brothersについて解説すると、基本的な形はGoodman Speakerと同じですが、AXIOM80がとてつもなく扱いが大変なので、もっと気楽に、POPSやJAZZも聞けるのがいいなーと、思っていたのでいろいろスピーカーユ二ットをさがしていたら、その昔の日本のメーカーでEXACT(エグザクト)の5150cというデッドストックのWコーン16cmのフルレンジを見つけました。ちょっと見には、中心のイコライザーなしのLowtherに似ています。磁石はばかでかいアル二コで、後で出てくる低域用EMIの倍はあるかも。こいつを目玉のメインにします。コーンは白い和紙でエッジは羊の皮、センターキャップのジェラルミンの内側は、おっとせいの皮でダンプしてあるとか、ボイスコイルもボビンの内側と外側に巻いてあるボイスコイルで、ネットワークを入れれば、フルレンジで、高低のバランスコントロールができるという具合に、これでもか! と凝りまくったものです。こんなものを作っていたら、せちがらいこの日本では、会社がつぶれるのも無理ありません。
ほっぺの位置にはIsophon製のエレクトロスタティックのスーパートゥイーターを左右に使っています。バイアスDC250V、出力管のプレートからキャパシターを介してつながっています。50年代のテレフンケンなどのコンソールに使われたと思われます。狭い自宅では、1000pFぐらいでつなげると、シンバルの余韻など気持ちよく、空間にちりばめてくれますが、広い北原さんちで、どれだけ大きな音でならすのか、さっぱりわからないので、200pFぐらいにして、安全をみています。
今回3wayなので基準になるエンクロージャーの容積及びバスレフポート寸法などわかりません。まず簡単にバッフルに取り付けて 手持ちのコイルでEMIの高域だけ切ってEXACTにつなげてみました。結構このままでいい感じです。ちょっとずつコイルのインダクタンスを上げていいころ合いを見つけます。300Hzぐらいで、男と女の声が上下に分かれて聞こえなくなったのでこのぐらいにします。
次はティ−ル&スモール。パラメーターをコンピュータシュミレーションソフトに入れて、だいたいの容積とポート寸法を計算します。意外とEMIは低域が伸びているので30Hzちょっとぐらいにしてます。
箱を試しに作って実験した後本番です。
スピーカーは本当に手間がかかります。世の中にある高級スピーカーが意外と安物のユニットを使っているのを見かけますが、スピーカーの値段は箱とネットワークの実験コストが相当占めているのは明らかです。数が出ないとずいぶん高くなるのは自分で作って初めて納得しました。
エンクロジャーは、ラフスケッチを元にそのまま作っています。はっきり言って各パーツの接合面がかなりの割合で曲線なので、現物あわせですり合わせるのが気が狂いそうになるくらい大変でした。最初から“そんなバカな設計するんじゃないよ”と言われればそれまでなんですが、できるだけ理詰めでやった後は、できるだけおバカな要求は大体飲む(自分で要求しているのですが)というのが、私のポリシーなのでしかたありません。
目玉のグリルの真中には、Lowtherのようなでかい電球型イコライザーを付けています。多少高域の拡散の効果のためです。
あと名前Decca Brothersというのは、Exacta5150cとEMIが、ともにDeccaレーベルのモニタースピーカーに採用されていたということで、今回Wで使っているのでそういう名前にしました。
Electric Baron
これは基本的には King of Audioと同じです。すこし小さく設計しました。
まず頭の部分ですが、今回はパワーアンプはシングルエンドでいくことにしました。自分が使っている6AC5GTのシングルがことのほか音が良かったので、パラレルシングルで、7から8Wを目指しました。電源はタムラでチョークインプットになってます。既製品で間に合わせるに知恵を絞りました。
出力トランスは、イギリスのパートリッジと、贅沢しています。音は、いままでつくったアンプの中で最高!(これだけ贅沢して、音悪かったら、許さん!)それにしても、戦前の、電器蓄音器やラジオにつかわれていた、6AC5GTというしょぼい真空管から、こんないい音がでるんだから、真空管て、ほんと不思議です。
全体の構成は、下はプリ、上はパワーと、重箱のようなつくりになっています。下のプリアンプは前作で気にいっている、QUAD22型 DAコンバ−ターがMICRO
MEGAの、バランスアウト付きなので、ここは、トランス受けが、王道というわけで、有名なUTCのLS-30という、普通プリアウトに使うトランスを使ってます。もう、矢でも鉄砲でも、もってこい状態です。それで、効果は? と聞かれると、うーむ… 良くなった気がする、としか言えません。オーディオは、この“気がする”で成立している文化なので、よしとしましょう。セレクターはロシアの軍用品です。自分用に造ったアンプのセレクターに,安物を使ったところすぐ接触不良をおこしてひどい目にあったので、ここはちゃんとしないと怖いです。しかし、いくら軍用とはいえ こいつのツマミのかたさは半端じゃ有りません。とても人間が使うとは思えません.このロシアのセレクターを目の前にして 自動車メーカ―に勤めている友人の話が思い出されます.彼のメーカーにカナダからクレームが来たのだけど、その内容が ブレーキペダルが車の床にめり込んでしまったということなのです。エンジニアたちがいろいろ調べても どう考えても人間の力では不可能で 結論としてきっと熊!が運転していたのだろうということにしたそうです。ロシア軍にもきっと熊の通信兵がいるのでしょう。恐るべしロシア軍!私 決して熊用のアンプ作っているわけじゃないので、なんとかクリック用のスプリングを弱めて 人間用に調節しました。フーッ(ため息)
そして、お腹の中には、レコードプレーヤ−が入ってます。
このドイツのDUAL 1019と言うオートマティックプレーユニットを使っています。こいつはコンパクトに出来ているわりに、アルミのターンテーブル、すごく重いです。一度オートマティックプレーヤ−を使うとマニュアルは、使えなくなります。ほんとに便利で心地よい音楽を聴いて、ウトウトと、夢見心地の時、レコードが終わった時に、わざわざアームを上げてスィッチを切ることが、いかに苦痛なことか! 私はこのことだけで、マニュアルじゃなく、オートを選んでしまいます。しかし! 昔のオートプレーヤ−を100%LP(数々の形状の違う)の最初の溝に、落ちるように調節するのが、かなり大変です。50Hz用のプーリー、この場合テーパ状でしたから、製作するのにこれまた大変です。はっきり言って、次作るときは、THORENS
TD124かGARARDのマニュアルに戻るかも…(ウーン、根性なし!)。
フォノカートリッジは、いろいろ考えたのですが、アームがダイナミック型でミディアムコンプライアンスのカートリッジ用だとめぼしを付けて探したのが、AKG7Eでオーストリア製です。MI型で針交換できます。とてもユニークな形にほれました。つい変わったものに手を出してしまいますが ラッキーなことにとてもいい音で、なによりジャンルを選ばないとこが気に入りました。あんまり気に入ったので8Eと言う上の機種も後で手に入れてしまいました。AKGはクラシック用かなと思っていましたが、認識を改めました。交換用の針は日本では手に入りませんが、イギリスその他の国のレコード針屋にはありました。オリジナルの針は結構値が張ります。でもいま作って売ったらとてもこんな値段では買えないでしょう。
ターンテーブルベースは、板の積層でユニットのメカが入るように中をくりぬいてあります。足は振動吸収用のαアルファゲルとか言うブヨブヨゴムで、けっこうベタベタするので底にコルクが張ってあります。これで多少の振動はOKです。
腰の部分は、CDプレーヤーが入っていて、今回はSONYのピックアップ固定式のやつを使ってます。その下にDAコンバーターのおフランス製MICROMEGAが入っているので、完全にCDドライブで使ってます。MICROMEGAとSONY内臓のDACを聞き比べると、どう聞いてもMICROMEGAの方が音楽が生き生きとしているように聞こえます。中を開けてみると、初期のSONY-PHILIPSの教科書的な回路です。しかしながら、本当に教科書どうりにまじめに手抜きなしで作られているように見えます。要するにちゃんと作れば、ちゃんといい音でなるんだなと思った次第です。最新の物が必ずいいとは限らないのは、やはりどこかで手抜きをしてるのかな? と疑ってしまいます。
足の甲の取っ手を引っ張ると、CD用の収納の引き出しが出てきます。体の隅々まで役に立つ奴です。
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