撮影:渡辺裕一 (c) Galleria AMICA
オートバイに、ノーチラス号という、畏れおおい名前を、かってにつけてしまいました。ネモ船長ゴメンネ。

これは、六本木のAXISで、個展をする時、AXISの林英次氏(もとライラックのエンジ二アだった)からバイク好きなら、バイクだしてよ、と言われ、突貫で作ったものです。SUZUKIから一台提供してもらい、ホイル、フロントサス、スイングアームの一部、ブレーキなどを使っています。

エンジンは木彫りです。ですから、まさに、モックアップ、動きません。

この作品、その時僕が乗りたいバイクを作ったので、別に、アートしようとか、奇をてらおうとか、思ってませんでした。素直な、バイク好きの気持ち、こんなバイクあったらすぐ買うのになあ、という気持ちで作ったもので、今でもほんとにあったら、欲しいです。

アーチィストが作ったものにしては、レトロすぎて平凡だ、というプロのデザイナ−の意見でしたが、そんな変なもん作って乗ってたらはずかしいだろ! と、ちょっと、突っ込みたくなりますが、いろいろな、制約や、営業サイドの圧力やらで、ろくなデザインをさせてもらえない彼らと、業界に同情こそすれ、きつい、つっこみは、ちょいとかわいそうかも。でも内心彼らの能力を開放したらどんなことになるのか興味あります。 日本のアニメ好きの若手イタリア人デザイナーなんか目じゃないはずなのだが?

というわけで、私の理想のバイクの解説をいたしましょう。

オートバイは、SLなきあと、エンジンがむきだしの、唯一の乗り物である、ということです。非常にレトロなものなのですよ、実際は、生きている恐竜みたいなもんです。転ぶと、すぐ、けがするし。

ですから、エンジンが見えないオートバイ、エンジンがカッコ悪いオートバイ、エンジンに個性のないオートバイは、はっきり言ってただの、乗り物。趣味のオートバイじゃ無い。もちろん、モータースポーツは別だけど。横暴な私は、こう断言してしまいます。エンジン形式は本当は何でもいいんですが、やっぱり空冷、あの、エンジンフィンがいいんですよ。自然、空冷なんていまやバイクの特権だし、水冷じゃエンジンちっちゃく見えて、貧相だし、DUCATIのように、1000ccぐらいあれば、みばもいいけど、今日は、空冷単気筒で、決まり、いじるのも楽だし、パーツ代も、4気筒だと、ばかにならないしね、維持が楽で、末長く使えるというのは、やっぱり単気筒が一番、で、排気量はいくつかということなのだが、この、排気量というのが、私、腑におちないのです。税制でも、モーターレーシングでも、同じ排気量でも回転数を上げれば、吸いこむ酸素と、燃やす燃料が増えていくのはあたりまえ、大きな排気量でも回転数を落とせば、同じこと、要は、熱効率がいいのが、良いエンジン、回転数を上げてパワーをかせぐのが、良いエンジン、という考えは、そろそろやめてもらいたいなあ。F1なんか燃料の量決めて、エンジン形式排気量制限なしにしてしまえば、みんなエンジンってなんだろうって、考えるのにね。どうせだれかが、ある程度ベストなものを見つけたら、みんな右へならえになるんだから、何の問題もないと思うんだけど。

ちょっと話をもどすと、私の選んだのは、ミラーサイクルエンジン、こいつはターボのような過給システムが必要なので、今回スバルの軽自動車用のルーツコンプレッサーと、インタークーラーを使用。ほんとはもっと、効率のいいコンプレッサーがいいんだけど、今これしかない。それで、排気量は350ccで4バルブ(別にOHVでもSOHCでもいいんだけど、とりあえずDOHC)でミラーサイクルの場合、吸気の下死点前に吸気バルブをしめてしまうので、圧縮比(膨張比と、言った方がいい)高いままで熱効率がいいんです。で、希望パワーは、40馬力ぐらい。これで、車体が軽けりゃ、私には十分すぎるくらいです。(心の中では、おまえの腕じゃ、30馬力がせいぜいだろ! という声も聞こえる)

エンジンレイアウトは、日本では、カブや、外国では、アエルマッキや、モトビ、モトグッチなどの水平近くまでたおしているレイアウトです。このレイアウトの欠点はエンジン長が長くなり、必然的にホイールベースが長くなり、なんとかしないといけません。DOHCですから、ヘッドが大きくなり、フィンをつけると、もっとでかくなり、これは、ヘッドは油冷と言う事で、フィンをなくします。そして、あとは、ギアボックスのレイアウトをずらして、何とかうまく、コンパクトに全長をおさえます。スプロケットの位置は、スイングアームビボットから大きくはずすことができないので、大変です。(動きもしないエンジンに何やってるんだろうと、我ながら思う。)

フレーム……バックボーンフレームです。アルミの溶接構造(だといいね)で、中に燃料タンク、エアクリーナー、バッテリーが入ります。要するに、一口でいうと、でかいHONDA DAXみたいなもんです。燃料タンクの前半部分のサイドはトランクになってます。このフレームとタンクの形からして、ノーチラス(おうむ貝)というイメージなので、ノーチラス号と命名いたしました。ノーチラス号にもちょっとにている。

リアサス……フランスのフォルナレスのガスショックスプリングです。コンベンショナルな2本サスです。1本サスだと、磨きにくくていや! というただそれだけです。それに、高級サスをおごっても、見えないのは、実にもったいない。でも定番のオーリンズじゃ、ちょっとデザインが合わないので、フォルナレスです。シンプルでかっこいいのに、全然はやらない、なぜ? スイングアームはグースですが、長さを縮めています。

排気管……このマフラーと言うか、消音器の位置ですが、最近オンロードバイクでもシートのうしろから、排気を出すバイクが、多くみられます。しかし、私はいいたい、かっこは、いいと思っていたのだが、信号まちで、そういうバイクのうしろにいると、顔に排気ガスがモロにあたる!または、あたっているような気になり、コノヤロー、テメエの排気ガス、人様の顔に当てんじゃないよと、頭に血がのぼってしまいます。それで、そう言うバイクの写真をみても、腹がたってくるので、マフラーは、なるべく地面に近く、バンク角をある程度かせげる位置に丸じゃなく、五角形断面のものをとりつけます。

ライト……プロジェクターの縦二眼です。今じゃけっこう採用車がありますが、この当時は全くなく、私が最初じゃないかな?でも、こんな、誰でも考えつくようなことで、自慢してもアホくさいので、ライトを支えるアールデコっぽいプレートの方を自慢しちゃおう。

スクリ−ンメーター……この形からネタは戦闘機のヘッドアップディスプレーだと気付いた人は、相当のマニアだね! 本当にHUDだといいね。

シート……二人乗り用、でも、実は、荷物用でもある。街乗り、ツーリングとはず、いろんなものくくりつける場所がないとね。オートバイに、荷物しょわせないで、何でライダーがリュックしょわなきゃなんないの? シングルシートなんて余計なお世話だし、おしりの位置まで、指図されたくないね。そして これが一番重要なのだが 美人とタンデム!(そんなチャンスがあればの話だが)をはなから拒否することは人類の男としては、決して出来る事では有りません!!

ハンドル……ほんのちょっとアップハンドル、腰痛持ちは、クリップオンなんてムリムリ! だいたいあのカッコはスプリントのカッコでしょ、まるで、競馬のジョッキーみたいに、カウボーイが、あのカッコで乗ってたらすぐへばるぞ! 

スタンド・・・・メインスタンド付き チェーンの張りや給油に必需品

というわけで、いろいろバイクに、勝手な注文をつけて、勝手にでっちあげたのが、このバイクであるということが、よくおわかりになったとおもいます。ああ、本物がほしい!! でも、アエルマッキやモトビの中古を買って、いじりまわすには、ちょっとムリがあるので、そのうちお金持ちにでもなったら、ノーマルのモトビあたりで結構満足してしまうかも?(いや、ぜったいに改造するね、と言う、心の声がきこえる…)