撮影:渡辺裕一 (c) Galleria AMICA

Araki-Voisin

これはヴォワザンと読みます。フランスの有名な飛行機製作者及びメーカーの名前です。高級車も作っていました。

この作品は基本的にはカメラやライトと同じように女性の体をモチーフにしています。この作品を作るきっかけというのが、たまたま 銀座のイエナで洋書の車の本をパラパラとめくっていた時、偶然このVOISINのGPマシンの古い写真と出会ったことによります。あまりのすごさに呆然となりました。これだ! と思い30秒間だけじっと見つめて、すぐ本だなにもどして 後で私なりのVOISINのマシンを空想で作り上げたものです。

オブジェなので人の乗るところはありません。人体のようなバックボーンと肋骨および骨盤を模したフレームで、エンジンは、スーパーチャージドDOHC空冷直列8気筒というでたらめの仕様になってます。モデルはAGUSTA 750Sです。AGUSTAには思い出があります。東京に出てきたとき 最初に行ったのがAGUSTAの輸入元の村山モーターズなのです。そこでAGUSTAの組み立てを見学させてもらいました。新品のエンジンのなんときれいなこと 新しい1円玉をコンクリートの上でハンマーでつぶしたような質感と色で、白く輝いていました。どうして エンジン美術館ってないのか不思議です。へたなモダンアートよりよっぽど素敵です。もちろんそんな物があるような世の中なら、私のようなへたくそなんか出る幕なんかありませんが。おっと脱線してしまいました。そのエンジンの上にある真っ赤な一本のバックボーンフレームが微妙な曲線を描いてまるでバイクの背骨(まさにバックボーン!)のように見えた事が思い出されます。VOISINの背骨も今思えばそこからきているのかも。

このエンジンは、しゃがんで覗き込まないと判りづらいです。判りづらいと言えば、女性の形をしているということが、上から俯瞰しないとわからないのが残念ですが、後姿がなかなかセクシーな車だと自我自賛! サスペンションはフロントWウィシュボーン、リアでたらめドディオンアクスルで当然機能はしません。また話がそれますが、最近のF1の中継で、縁石を乗り越えるスローモーションが時々映し出される時、タイヤがプルプルと変形するのは見て取れますが、サスペンションアームが動いているようには全く見えません。地上高が数センチしかなく、車重をはるかに越えたダウンフォースがかかるので、逆に動いてもらっては困るのは理解できるのですが、じゃあなんの役割をしているのか不思議です、誰か教えて!

この車のオブジェの写真が縁で、長年あこがれていた「CAR GRAPHIC」の小林章太郎氏ともお会いすることができて、まことにラッキーな車です。AMICAの岡田さんにも感謝!!